Lychee Redmineで工程管理の可視化を推進、遅延削減と品質向上が認められ「草の根」から部門全体へ導入を拡大

日本信号株式会社(以下、日本信号)の久喜事業所では、システム開発の工程管理ツールとして、「Lychee Redmine」を導入した。
グループや部門をまたいだ、工程管理の可視化と標準化を通じ、工程遅延の削減、製品品質の向上に取り組んでいる。


設計・開発における工程管理の可視化と標準化で「公共の安全」に関わる製品の品質向上を目指す

1928年に設立され、鉄道や道路といった公共インフラの安全・安心に関わる「信号機」、「列車制御装置」、「交通情報システム」などの製造で国内トップシェアを誇る日本信号。埼玉県久喜市にある同社の久喜事業所、久喜統括技術部 インフラ機器技術部 標準化推進グループでは、同社の製品において共通で利用されるシステムの開発を行っている。

同グループの池田岳雄氏は、「当社では、ATS(Automatic Train Stop:自動列車停止装置)や、ATC(Automatic Train Control:自動列車制御装置)といった製品を製造しています。こうした製品には、列車やシステムの状態に異常があった場合に、それを検出する仕組みが共通で組み込まれており、われわれのグループでは、そうした、当社製品で共通で利用されるシステムの開発を手がけています」と話す。

池田氏は、久喜事業所における工程管理の可視化と標準化を目指し、OSSのプロジェクト管理ツールであるRedmineおよび、その商用拡張プラグインであるLychee Redmineの運用と、活用範囲の拡大に尽力している。

池田氏が所属するグループにおいて、工程管理の可視化と標準化はかねてからの課題になっていたという。「プロジェクトの課題や進捗の管理は、各担当者やチームで表計算ソフトのファイルをサーバー上に置き、共有するというのが慣例になっていました。しかし、この方法では、他のチームの進捗状況が分かりづらかったり、常にファイルの内容を関係者が注視していないと、更新や進捗が滞っていても気付くことができなかったりといった課題がありました。そのため、チームや部門を越えて、プロジェクトの状況を共有し、可視化できるツールの必要性を感じていました」

OSSであるRedmineのメリットを生かしつつ使い勝手を向上させるLychee Redmineを導入

グループの有志でツールの検討を行った結果、2014年にOSSのプロジェクト管理ツールであるRedmineを導入。約20人のメンバーで試験的に運用を開始した。その後、商用拡張プラグインであるLychee Redmineの導入に至ったきっかけは、組織変更によってグループの規模が拡大し、より多くのユーザーにRedmineを利用してもらう必要が出てきたためだったという。

「Redmineの導入で、プロジェクトの状況や担当者による更新忘れなどが可視化されたのは良かったのですが、標準の状態では、チケット操作や情報更新などの操作性が悪く、使うユーザーが限られて、現場での活用が定着しないという課題も感じていました。組織変更で人数が増えたこともあり、新しい人にもプロジェクト管理ツールを使ってもらうため、より使いやすい仕組みを用意する必要があると感じました」池田氏らは、展示会などで情報を得て、好感触を得ていたLychee Redmineの導入を決め、2017年に40ユーザーの規模で利用を開始した。

導入決定にあたっては、他の商用プロジェクト管理ツールやプラグインとも比較検討を行ったが「管理職だけでなく、現場全員で使える環境を作りたいと考えた場合、コスト面でのメリットが一番大きいのがLychee Redmineでした。また、国内の企業が開発・販売しているという点で、サポート面での安心感があった点も選択した理由のひとつです」と話す。

日本信号様:Lychee Redmine導入事例

日本信号株式会社様

日本信号株式会社

本 社: 東京都千代田区丸の内 1-5-1
新丸の内ビルディング 13 階
設 立:1928 年12 月27 日
資本金:100 億円
従業員数:1,255 人(2019 年3 月31 日時点)
「『安全と信頼』の優れたテクノロジーを通じ、より安心、快適な社会の実現に貢献する」ことを企業理念に、公共の交通インフラである鉄道や道路の信号機システムなど、多様な製品の製造を手がける。
創業100 周年に向け「インフラの進化」を安全・快適のソリューションで支え、世界で必要とされる企業を目指すことを掲げる。
URL: https://www.signal.co.jp/


使い勝手の向上でユーザーが増加、社内での注目も高まり導入範囲も拡大

久喜事業所では、さまざまな製品開発、設計プロジェクトの工程管理において「ガントチャート」が頻繁に使われている。Lychee Redmineの導入により、Redmine上での「ガントチャート」の操作を、GUIで容易に行えるようになった点は、社内でも特に高く評価されているという。

「情報の更新にあたって、必要な操作が分かりやすく行えるようになったことは、アクティブユーザーの増加にも大きく貢献しています。Redmine 単体で導入した際に、その使い勝手に馴染めず、利用状況が悪かったユーザーの中にも、Lychee Redmine の導入後に積極的に情報を更新してくれるようになった人が多くいます」

池田氏のグループでは、Lychee Redmine の導入後、メンバーへの利用方法のレクチャーや普及活動を行いつつ、工程管理を着実に実施して、遅延を発生させない活動を続けていった。その結果として、久喜事業所の他のグループのマネージャーや経営者にも「工程管理の可視化と標準化」によるメリットが徐々に知れ渡ることとなる。

「定例会議などでの報告を通じて、特に工程遅延が少ないグループとしてわれわれが評価されると同時に、グループで導入している、Lychee Redmineによる工程管理のプロセスが注目されるようになりました。それに合わせて、経営部門に対しては、実績や問い合わせ削減率の概算などを示しながら、Lychee Redmine が工程管理に有効であり、品質の高い仕事につながるツールであることを印象付けていきました」

Lychee Redmineデモサイト:ガントチャート画面

Lychee Redmineデモサイト:ガントチャート画面

日本信号様:Lychee Redmine導入事例

久喜統括技術部
インフラ機器技術部 標準化推進グループ
池田 岳雄 氏

※取材日2019年11月
※記載の担当部署は、取材時の組織名です

このような活動を通じ、当初は20 人ほどのグループで草の根的にスタートした工程管理の可視化と標準化に向けた取り組みは、部門全体を巻き込んだものへと拡大を果たす。ツールに対する予算も承認され、2019 年からは、400 ユーザーの規模で、Lychee Redmine の運用がスタートした。池田氏をはじめとする有志のメンバーによって、新たなLychee Redmine ユーザーに対する、社内でのハンズオンセミナーなども実施されており、アクティブユーザーの数も順調に拡大しているという。

「Lychee Redmine の良いところは、このツールの便利さに気付いた人が、自発的に使ってくれ、それをチームの中で広めていってくれるところだと思います。プロジェクト管理ツールは、利用するユーザーが増えて、常に最新の情報を入力してくれるようになるほど、価値が高まっていきます。これまでの活動を通じて、事業所内に、Lychee Redmine がまったく知られていない部署があるという段階からは脱することはできたと感じていますが、今後もさらに多くの人に使ってもらえるように、普及のための取り組みを続けていきます」

標準化に向けた取り組みは「道半ば」 さらなる活用レベルの向上と導入拡大を目指す

同事業所で使われているLychee Redmine の機能は「ガントチャート」が中心となっているというが、アクティブユーザー数と更新データの拡大に合わせて「工数管理」や「バーンダウンチャート」「EVM」(Earned ValueManagement)といった、よりマネジメントや意思決定に役立つLychee Redmine の機能も、活用を進めていきたいという。

「ベテランの技術者や多忙な管理職ほど、Lychee Redmine を積極的に使えていないという現状があります。製品のバージョンアップを通じてより使い勝手を向上させたり、運用を工夫したりといった手段も駆使しながら、さらに活用のレベルを上げ、導入範囲を広げていきたいですね。そうした取り組みを進めていくにあたって、テクマトリックスからも有用なサポートが受けられるとありがたいと思っています」